誕生日を区切りとして, 研究生活を中心に一年を振り返るシリーズ.
過去編: 修士1年の備忘録, 22歳だったとき
2月
修士の構想発表があり, 今までの研究をいったんまとめる. マルチエージェント経路計画のfancyなアプリケーションが欲しいとボヤいてたら, 先生から寿司を回せばいいのではとのコメントをいただき, 一日を潰して実装. 公的な場でも多用する鉄板ネタとなる. IJCAI-19に論文をサブミットすべく(PIBT), 比較手法の実装, 追加実験など, 論文の完成度を高める作業に没頭する日々. 理論も実験結果も文句ない強力な内容に仕上がる. 博士課程進学に向けて外部アピールのためにポートフォリオを作成しておく. 先輩方の卒業祝いのために研究室メンバーでビール30L作りに行ってた. 拭い去れぬ闇鍋感.
3月
ホワイトボードと毎日にらめっこして, チョコとコーヒーを大量に消費しながら, 先に開発したアルゴリズムの一般化に取り組む(winPIBT). 時間と空間がこんがらがる, 我ながら随分複雑なことをやっていたと思う. 来年以降の資金をなんとかすべく, 吉田育英会のドクター21に申し込む. 今思うと拙い内容だった. 自己身体認知の研究でNを増やした内容をジャーナルに投げておく. 所属研究室の1期生である先輩方が卒業していった. 寂しくなるね.
4月
吉田の学内選考(2名)は通る. 教授陣3名による審査だそうで. 講義シーズンが始まり, 統計力学をがっつり学ぶ. 先生の教え方好き. 同期たちと企てて分散アルゴリズムの裏輪行を始める. 通称Tel本, 内容が重い. 表輪講はメカニズムデザインでした. 同期・後輩を巻き込んで, 先生方も説得して, インフラを創るんだ!と夢見て, マルチロボットシステムの共同研究(AFADA)を開始する. 自分を代表するワークの一つになりそう. 一般化を図っていたアルゴリズムは見通しが立ち, 早速論文を書き始める. IJCAI-19のレビューではポジティブな反応をもらい, アクセプトをもぎとるべく慎重なリバッタルを書く. 先生の部屋で5時間引き篭もりながら一緒に書いてた. 一生頭が上がらない. 学振DC1の申請もボチボチ用意を始める. 自己アピールが事故アピールと化す. レビューしてくれた人たちに感謝. 熊野古道・高野山に修行しにいっているんですが, いつ時間あったんだろう.
宿坊は良き.
5月
GWは物理のレポート, 学振書類, 論文執筆に追われて吹き飛んだ. 気晴らしに自作キーボードを作成, その後の相棒となる. 泥団子も作成, その後の飾りとなる. IJCAI-19はminor revisionでアクセプト. 非常に良い成果. リバイズを頑張りつつ, 少し肩の荷が降りた. 祝いは回らない寿司. 論文を新規で一個arXivにあげる(winPIBT). 学振書類もサブミット. 内容はマルチロボットシステム(AFADA)の話で, 通っても文句は言われないクオリティには仕上げた. 研究で使うので3Dプリンタやレーザーカッターの練習もちょろっと. 吉田は書類選考も通って最終選考に進む. 自己身体認知の方のレビューも返ってくる. リジェクトではないが対応が大変そうで方針に悩む.
6月
吉田の最終面接, 10分プレゼン30分ディフェンス. 全国から5人程度なので狭き門, ダメ元で頑張る. 手応えは微妙だったが通る. 資金問題は深刻だったので肩の荷が降りた. 大学事務の人にはお世話になった. 周りの人が喜んでくれて嬉しかった. FIT-19という国内会議で発表するために経路計画の話を拡張して1個サブミット. 講義では解析力学を学ぶ. ネーターの定理とかカッコいい. 本当は去年授業受けておくべきだったんだが予定が合わなかった. 共同研究進めるにあたり, プロトタイプ用の電子工作をたくさんしてた. 意味わからんけどナミビア人のキャリア相談に乗ってた. 東大の人が僕みたいな研究したいって連絡して訪問してきてくれたのすっごい嬉しかった. 人生観変わるような出来事もあった, 事実は小説よりも奇なり. どうやらこの時期は本当に疲れていたようで, 先輩から無性に労ってもらったり, 同期たちが温泉に沈めに行ってくれたような. 青い服の友人にも頭が上がらない. 感謝.
7月
自己身体認知の方は結局提出先のジャーナルを変えることにして, それにともないイントロ等を変更. IJCAI-19発表の準備をボチボチ. プレゼンもポスターもある. 大学に訪問していたヨーロッパの学生集団に研究発表をする機会があって, 経路計画の寿司ネタやったらウケた. マルチロボットの研究の方はプロトタイプのプロトタイプv1が完成. ロボットの実機が動くのは本当に良い. ある日同期がトースターを改造したリフローをラボに設置していて笑った. モデリング含め理論的な側面の話も進める. 先生とお互い議論が嫌になるまで揉めた記憶がある. 良いこと良いこと. 物理のテストも無事にこなし, 副専門で必要な単位を手に入れた. 本学初である.
基盤は焼くものらしい. 僕もよく焼いた.
8月
小型ロボットのライントレースを使い物にすべく調整. 同期に光ってるの正義なんだよって言ってたらシステム全体が光り始める. 香港デモの情勢が気になりつつ, IJCAI-19発表のためマカオへ. カジノで時間使うより論文読んでた方が儲かる, つまり負けた. 発表は上々, このレベルで頑張り続けたいなと思ったし, 自分は幅広く人工知能をやっていきたいんだなと自覚した. トップの場所で発表することは人生変わる. AAAI-20に論文(winPIBT)をサブミットすべく, 既にarXivにあげていた論文のブラッシュアップ. 実験設定も見直し, 妄信的に取り組む.
9月
先生方に大迷惑をかけつつなんとかAAAI-20にサブミット. FIT-19@岡山で発表, 企業の人から声をかけてもらったり, IJCAI-19で会った人と一緒に観光したりした. 翌週は吉田育英会の交流会@黒部・金沢. 変人が多そうで好き. 修論の構想発表をはさみつつ, 翌週は分散アルゴリズムのワークショップ@広島で発表. 島でうさぎと戯れつつ最優秀研究賞をいただき励みになる. 飲みすぎた. もう不味い酒は飲まない. 翌週は同期たちと企てた研究室合宿@湯河原. 趣味プレゼンはマニアックでくっそ楽しい. 同期たちにとっては人生最後の夏休みの日である. もちろん盛大に煽った. この月はラボにほとんどいなかった.
10月
学振は通る. というか出した時からそう思っていた. 吉田と併給はできないので悩ましい. 少し考える時間をとる. 分散アルゴリズム・Tel本の裏輪行を終える. やって本当に良かった. ハンバーガーx50で打ち上げ. 機械学習の入門本ことPRML読み始める. 面白楽しい苦しい. D先生とF先生がやってる分散アルゴリズムの講義が面白い, 先生方も楽しんでいるように見える. 特にF先生のFLP不可能性の導出は感動した. ファインマンさんも言っていたが, 講義をもつのは良いことなんだなーとかとか. AAAI-20のレビューが返ってくる. 厳しい. 実力と時間不足. 英語もまだまだ. 7月頃にボンヤリ考えていた時間に依存しない経路計画に本格的に取り組む. 価値のある研究になると直感. 導入する概念が難しい新しい. Tel本が活きる. マルチロボットの研究のプロトタイプのプロトタイプv2ができた.
11月
AAAI-20はリジェクト. 己の未熟さを呪う. 時間に依存しない経路計画をとりあえずまとめAAMAS-20にサブミット. チョコレートの山を吹っ飛ばして強行スケジュールで進めた. 扱ってるトピックは面白い, が実力不足. もっと透徹した物事の見方を獲得しないと今後やっていけなさそう. 時間も足りなかった. でも今は質よりも数を打ちたい. 論文に詰まったらハンダ付けしてた. 共同研究絡みで, ある日同期が中国と貿易してて笑った. マルチロボットの方は物理素材が揃ってきたので本格的に開発を進める. 分散システムは難しい. メッセージはロストするし, チャネルは安定しないし, プロセスは死んでるかもしれないし, コードにバグあるかもだし, それでもシステムは生きていかねばならない. 特許もスピーディーに手配する. T先生の手際に感謝. 知り合いの先生にお招きいただき, 人生初の招待講演@長崎. 坂が多い街である. 親から修論の進捗を煽られ始める. 飛行機で乗り合わせた陽気なおばあさんにも煽られる. さあ修羅場だ.
12月
学振は辞退することに決め, 内定辞退の書を送付しておく. 受領の通知は来ない. 色々あって遅れていた自己身体認知のレビューが返ってくる. まだ手直しがいるけどアクセプトまで行けそう, リバイズを頑張る. 電車の中で修論を書き進める日々. ラボにいる間はマルチロボットの研究に専念. 同期と緊密に連携して作業をゴリゴリ進める. はんだ作業に加え, 3Dプリンタで型量産, レーザーカッターでアクリルを切り抜き, 真冬の屋外でスプレー色塗り, 万が一の消化器スタンバイ, 量産のための発注会社を探し, ブレストのためだけにビールを飲み, APIを書いて管理画面なるGUI作って, 特許文書を叩き, 同期たちの修論リポジトリに進捗煽りissueを立てる. 研究を進める上であらゆることを正当化したような. 4月から取り組んできた空想がようやく形になってきたんだ, 楽しくてしょうがない. ワイン漬けになった後, 12月30日まではラボに行っていた.
「ピクミンの処刑台」こと基盤抑え台. 青ピクミンの罪はデスクライトを破壊したこと.
1月
三ヶ日で修論を20pは書き進める. 時間に依存しない経路計画の研究でAAMAS-20のレビューが返ってくる. アクセプトからは遠いが, 有効なコメントをもらって研究に強力な方向性を創れることに気づく. IJCAI-20の締め切りが月末にあり, 横浜で開催予定なので出さない手はない. 修論の暫定版をトットと書き上げ, リサブミットの作業に集中. 自宅で作業してたら家族から集中し過ぎで怖いと言われた. 作業に当てられた時間が10日ほどしかなく, とにかく時間が足りなかったが, 良い研究に仕立ててサブミット. リバイズをしていた自己身体認知の方もリサブミット. ある日学振から突然連絡が来て, 制度変更により民間奨学金との併給が可能になったこと. 吉田&学振というとんでもないチート待遇になった. マルチロボットの研究では大量発注していたブツが届き始めてアセンブリに勤しむ. 10時ラボイン終電帰宅そこから飯という生活. なお自宅大学の往復には3時間はかかる. そんなこんなでようやくプロトタイプが完成. 見たかった光景の一つを造りあげた. 締切りが迫ってきた修論を手直しして無事サブミット. この内容からトップカンファ3本含む査読あり4本が出た/ることになる. 自分で言うのもアレだが文句なしの力作.
修論提出前日深夜に撮影.
総括?
研究者っぽいプロセスの一巡はできたかな. 研究生活の辛いこと良いことが満載でジェットコースターな一年だった. 周りの人すごい大事, 恵まれた. スキル的な面では未熟だなーと思うことが多々あり, 博士課程に進むモチベーションの一つ. 副専門の物理や自己身体認知の方でかなり時間を割いていて, その分をマルチエージェントの研究に回せばもっと精度の良いワークができるんじゃないかと思うことも多々あったけど, 欲張りなので全部ちゃんと取り組んだ. いつかきっと遠い未来で活きるはず.
誕生日お祝いしてもらった. 周りの性格出てるよね笑.