最初にお断り. 綺麗で力ある文章を書く労力は論文に捧げてしまったので散逸的な内容になります. 悪しからず.


2021年4月26日から10月15日までの約半年間, オムロンサイニックエックス (OSX) という企業研究所 (AI & Robotics) でフルタイム・リモートのリサーチインターンをしていました. メンターは 米谷さん.

取り組んでいたのはデータ駆動型のマルチエージェントプランニング. ユニークなテーマで特許も出願済みです. 論文も書いたんですが, まだ未公開.

では本文. 掲載にあたり事前に許可は得ています. リモートだからほぼ写真がないのが寂しいね.

記事の目的 / 誰向け?

  • 基本的には他の人が読めるレベルの 内省 です.
  • 全く繋がりがなかった人たちと研究プロジェクトを一回りさせるフローが書かれています.
  • 長期のリサーチインターン考えている人には多少は参考になるかもしれない.
  • OSX インターンは随時募集しているみたいなので, 少しでも興味ある人とか.

あなたは誰

東京工業大学 情報理工学院の博士課程 (2020-) の学生です. 研究対象は「大規模な移動エージェント群を制御すること」. 詳しくは ホームページ 見て. ツヨツヨじゃないけど頑張ってる人だと言えば雰囲気伝わるんじゃないかな. 機械学習 (ML) は PRML くらいは抑えていますが完全に対象外な人でした.

MLなにもわからないのでチューニングが必要なAPIくらいの感覚で生きてます

@_kei18 (June 10, 2021)

動機

かなり戦略的でした. 要因を羅列すると:

  • OSX の存在はけっこう前から知っていました. 色々と成果を出している機関は否応なく目立つ.
  • Neural A* のプレプリント (2020年9月) で今回面倒を見ていただいた方々を知る. 研究も面白い. きっかけ1.
  • 2020年末の米谷さんの 振返り記事 はかなり刺激になった (twitter で流れてきた). 一世代上の人たちが頑張っていることに触れられるのはめちゃくちゃ良い. きっかけ2. 今回直接的にはお世話になってないけど牛久さんの この記事 も良かった.
  • 研究的な意味で自分の立場が (ある程度) 作れてきたので, 単純な上下の関係ではなくて, それなりに良いコラボレーションができるんじゃないかと思った. 自分の能力の試し打ち的な一面で D2 の前期はいいタイミングだった.
  • 次インターンをするなら 勢いのある (小さめの) 場所 がいいと思っていた. 実際, OSX はそういうところだと思う.
  • 今後のコネクション増やしたかった. 特定の研究コミュニティに属しているわけではないので, 業績を出すだけではだめで, 顔を広く売っておく必要がある.
  • 4月1日の栄転ムーブにあてられた(

栄転したいぞっっ(

@_kei18 (April 1, 2021)

最後のはエイプリルフールです. 2021年3月中旬には決めてました. あれば嬉しいが金銭的な話はあまり関係なかったな.

指導教員には事前に「半年くらいインターンに行こうと思うんだけど」とは伝えてあり, 賛成を得ていました. こういう段取りを忘れべからず.

ファーストコンタクト

FY2021 研究インターンの募集に従って直接メールしました (3月23日). 事前のコネクションは一切ない状態で, 先方にも存在を認識されていなかったはず. メールには CV, ホームページ, 研究概要の PDF (直前に SIG-FPAI での招待講演があったのでそれ), 大雑把にやりたい研究の方向性を添付しました.

その後一週間ほどでインタビューがしたい旨の連絡を受け, 将来の共同研究者の方々と面談を行いました (4月5日). ある程度見当はついていましたが, 誰が出てくるか分からない状態だったので少しビクビクしてました. 中身は 20 分の研究プレゼン + お互いの研究関心の擦り合せ, 事務的な手続きの確認です. こちらからは じっくり時間をかけて研究に取り組みたいことを強調しました. 訊いたことを書き起こしておくと:

  • 博士論文に含めることはできる? -> 指導教員次第
  • アクセプトされるまでは論文仕上げる作業に関わりたいんだけど, 期間終わってもどうにかなる? -> 色々とやり方はある

先方からは研究の話を除くと, 共同で何かプロジェクト進めたことある? プロジェクトマネジメントの経験は? みたいなことを聞かれた. あるよ, たくさん. 自由度の高いコラボレーションを見知らぬ学生とリモートで組むのだから, 大事な確認だったのかもしれない.

某の面接, ただただ研究のお話できて楽しかったです

@_kei18 (April 5, 2021)

2日後 (4月7日) にインターン採用の知らせを受けました. メンターの米谷さんに加え, 西村さん, 金崎先生 (+途中から 笠浦さん) と非常に強力なチームで研究に取り組むことになりました. みんな僕とバックグラウンドが違う点もとても良い.

インターン開始まで

「はいインターン行きます」でどうにかなる立場ではないので色々と手続きしました.

  • 学振 DC1 をもっているので, 規約違反していないか連絡をとって確認しました. 2021年度よりの制度変更により事前の届け出は不要になり, 事後報告だけで良いとのことです. (C社のインターン学振枠みたいなのあるけど, あれ意味あるのか…)
  • 企業保険に加入するので国民健康保険を脱退しました. (正確には保険証受け取った後)
  • 大学の単位認定の手続きを行いました. 所属大学の規定で博士課程でもある程度単位をとる必要がありますが, 裏技っぽいことをやればインターンで単位が稼げます. 色々と前例がなかったので各所に迷惑をかけました. メールに追われていた記憶があります. 担当の先生との面談は面白かったです.

また, 研究テーマの擦り合せを文書ベースで進めました. 短期間 (2-3ヶ月) のインターンであればテーマが与えられる人が多いそうですが, 今回は お互いがやれることを鑑みてゼロから組んでいます. テーマ選定に関してはかなり選択の余地があり, 自分が当初やりたかったことがほぼそのまま形になりました. もちろん, もともとのお互いの関心の親和性が前提です.

事前に PC を送付してもらい (MBP の US 配列を手配してもらえた), 事務的な手続きを終えた4月末にインターンを開始しました.

本日よりOSX(オムロンサイニックエックス)でフルタイムのインターンに参加します!

データ駆動型のプランニングやる予定?個人的に一番面白そうだなと思っていた場所で、リモートが基本ですが、かなりどっぷり浸かって研究進めていきたいです。

関係者のみなみなさま、よろしくお願いしますm(_ _)m

@_kei18 (April 26, 2021)

インターンが始まってから

形式

全面的にリモートで, 9:00-17:30 (45分休憩) のフルタイムです. 土日祝日は休みですが, それに加えて GW やお盆には長期休暇がありました. 使いませんでしたが, 月1の有給もあります. たぶん時制なだけにワクチン休暇とかも取れたはず. 総じてとてもホワイトです.

待遇

インターン募集に書いてある通り, フルタイム月給24万円-48万円です. 具体的な金額は差し控えますが, 国内 CS 研究インターンの相場ですね. 以前 NEC データサイエンス研究所にいたときよりは貰っていますが (普通にいい額です), あれは修士のときだったからまた扱いが異なりそう…?

計算資源はメインの MBP に加えて, ワークステーション x2 (共用) + デスクトップ PC x1 (専用) を使っていました. リッチですね…

研究スタイル

  • 週一のチームミーティング (1h)
  • 研究ノート兼日報を逐次更新
  • 必要に応じてチャットツールで連絡
  • 研究資材は git 管理

という形で進めました. 詰まったときはこちらからメッセを飛ばしてましたが, 研究ノートを見た米谷さんが能動的にメッセを飛ばすことが多かったです. ノートは最低限他の人が読めるようにはなっていた (と思っている). 全体的な軌道修正はミーティング時にやってました.

ML を使った研究の経験がほとんどなかったので, 米谷さんのコード資産をかなり参考にしました. 興味がいい感じに被っていた恩恵です. 西村さんの技術サポートも心強かった. コードレビューもしてもらっていました. 色々とありがてぇ.

リモートで共同研究をどうアクティブに進めていくかはだいぶ非自明だと思うんですが, うまく機能したんじゃないかな. (というかみんなどうやって進めているの…?)

当初のゴール

「トップカンファ1本 & 自分を代表するワークになるポテンシャルあり」くらいに仕立てたいと考えていました. 研究がうまくいかない可能性もありましたが, それでも論文化しないのはナンセンスでした.

(リスクヘッジは常に意識してたけど, うまく行かなかったらどうしてたかな…)

縦横の繋がり

僕の他にもリモート組が主ですがインターン生がけっこういました. 8月は同時に10人程度はいたんじゃないかと思います. 機会に恵まれれば皆さんとオフラインでご飯でも行きたいです.

週一程度の頻度でランチョンセミナーと呼ばれる, 社員の方も含めて自身が取り組んでいること / 紹介したいことを喋る時間が設けられていました. リモートの影響で始めたっぽい. 色々な方々の話 (とりわけ自分より一回り上の人たち) が聞けたのは良かったです. 僕はマルチエージェント経路計画の紹介をしました.

スケジュール振返り

まだ論文を公開してないので, 書ける部分だけ.

4月-5月

初日は環境設定に加えて, 事務的なチュートリアル + 研究チームでキックオフミーティングを行って方向性の合意をとりました. その後一週間ほどは文献サーチと具体的な方法論のブレスト. GW 明けに初期プランが決まり, 使用ライブラリ選定など開発体制を整えました.

6月-8月

プランニングのパートに ML を組込む作業に取り組んでいました. めちゃくちゃコーディングしている時間もあれば, 実験結果を眺めていることも. ナイーブな実装だと学習がうまく行かなかったので, 色々と試行錯誤していました. 先が見えないことが多く, けっこう辛かった.

(↑開発姿勢)

9月-10月

ある程度強い結果が出る目処が立ったので, 論文化の作業に移ります. オリジナルの実装では規模の大きい問題を解くのに非常に時間を要したため, コードの最適化をそれなりにかけました.

論文執筆はざっくりと, 僕が叩き台を作る -> 米谷さんが全面的にリバイズ -> 執筆陣でひたすらリファイン, という流れ. (いつもですが) 論文にまとめるときが一番学びが多いですね.

新規プロジェクトでしたが, 最終的に良いものに仕上がったと感じています.

大学の研究との兼ね合い

フルタイムでインターンとはいえ, ラボの研究はボチボチ進める必要があります. 週に ≥25h は確保していて, 期間中にサブミットx2, 国内発表x2, 国際学会x2, 博士課程の中間審査等をこなしています. 要するに普通に進捗してました.

自宅の外に出ることも限られており, 総じて研究漬けな日々でしたね…

その他

  • ちなみに社 PC は Airdrop や USB が使えません
  • 寝坊しないかどうかが一番心配していたことです (真面目な話)

所感

  • OSX まじでいいところだな… 研究に集中したいのであれば, とても恵まれた環境なんだと思います. (あくまで外野の感想ですが) 中にいる人たちの「自分が所属する組織を良くしていきましょう」という姿勢がところどころに感じられて, それも良かった.
  • 一緒にやっていた人たちのバックグラウンドが違う点がとても良かった. 言語化しにくい知見をたくさん得た. 今後こういう経験を増やしていきたい.
  • 詰まったときに米谷さんがガンガン案だしてくれるのが本当に助かった. ああいう展開力は憧れるのだけれど, 身につくものなのだろうか…
  • けっこうコード書いた. もう少し全体の作業量減らさないとミスも増えるので, どうにかなるのであればどうにかしたい.
  • 研究テーマはだいぶうまく立てた気がする. とりわけポジショニングが良かった.
  • 労働時間内で研究を進めるのはなかなか斬新な経験だった. 時間管理意識しないとこの先辛そう.
  • 論文書く能力はまだまだ. 執筆時のみなさまのコメントが身に刺さりすぎて痛かったぜ… 時間かければどうにかなるんだけど, もう少しスピードあげないと今後辛い気がするので鍛錬します.
  • 特許打ち合わせ時の弁理士の先生の話の汲み取り力が尋常じゃなかったですね… あれはすごい.
  • インターン終了後に国民保険の復帰手続きしたんですが, 「失業扱い」で役所の人が妙に優しかった. お, おう…
  • 3年後くらいに, もっと対等な立場で一緒にワークできるようなレベルになりたい.

締め

手厚いサポートのもと, じっくりと腰を据えて深い研究に取り組むことができ, 非常に満足しています. インターンを通して得られた知見や, (他のインターン生も含めて)ネットワークが広がったこと, いずれも今後の財産になるんだろうな. 研究そのものについて触れると, (ちょっぴりでしゃばった言い方が許されるのであれば) それぞれが得意なパートを持ち寄った質の良い学際研究でした. 文章にしてしまうと陳腐化してしまいますが, 良質な体験をたくさんさせてもらいました.

関係者のみなみなさま, 大変お世話になりました!あと, 今後もぜひよろしくお願いします m(_ _)m


最後の最後に念願のオフィス訪問が実現できた! + 色々と実在していることを確認した (10月14日). 謎にアフターストーリー感があって, それもよかった笑.


動機のディープな話.

  • 真のきっかけ. COVID-19 の影響で, 博士課程入ってからかなり孤独に研究を進めていて (もちろんラボメンのサポートはあるけれど), 年末の振返りをしたときに, もうこんな状態はやめようと思った. 横でも縦でも斜めの関係でもいいが, とにかく一緒に研究を進められる人を増やさないと今後ダメになりそうだった.
  • 定期的に周りの環境を変えるべき論の信仰. 博士課程の先の進路は極めて不安定なので, どこに行っても生き残れるようになるためには, 色んな環境でそれなりのワークを学生のうちにしておいた方が良いという考え.