誕生日を区切りとして, 研究生活を中心に一年を振り返るシリーズ. 後から見ると苦々しく若々しくて, とても刺されるものであってほしい. 若い文章は若いときにしか書けないのだから.
過去編:
2月
AAAI-21に参戦. 時間非依存な"オンライン"経路計画を発表. 日本からは27本らしい. 毎年このレベル通したいね. ポスター発表は基本どこも過疎っていて, オンサイトの学会が恋しい. MAPFの逐次改善の話を完成させてIROS-21+RA-Lサブミット. 新規でオフライン時間非依存経路計画(OTIMAPP)の研究を進める. AAAI-21のスライド作成時に思いついた内容で, 代表作レベルになりそう. JSAIに無理やり出す. 東工大・情報系若手教員のオンライン飲み会に混ぜてもらう. 自分より少し上の世代の話を聞ける機会は貴重でとても良き. T先生は潰れていた. カウンターデスクやドライフラワーを作ったりもしたが, この時期は無限に研究していて, 完全にワーカホリックだった. コロナ生活に慣れてきたんだと思う. この月は人に会わなかった.
3月
AFADAがICRA-21アクセプト, 非常にめでたい. イントロ強力にしたのが効いた. OTIMAPPの研究にF先生が参戦, 理論解析を手伝ってもらう. 学ぶことが多い. 解きたい問題がNP困難であることが示されてしまった. シン・エヴァ回収, 誰かの執念に触れることはとても良い. そろそろ環境を変えるべきと思ってインターンと海外留学を考え始める. ドローンを購入して自宅で飛ばす. 障子破りそうなので即禁止になる. SIG-FPAIで人生二度目の招待講演. どうせなら日本における立場を固めようとMAPFのチュートリアルを混ぜる. 時間配分ミスったが, このとき作成した資料は各社に参照されているらしい. ワイン会を開催してはよく潰れていた.
4月
渡仏計画を立てて, 日本学術振興会・若手海外挑戦プログラムに応募する. AFADAをベースに書いた. 申請書類が2ページで比較的楽に終える. toioを10匹買う. 小気味よく動くので使いやすい. 自作キーボードの無線化を試すが遅延が気になり結局クビ. OTIMAPP論文を早速書き始める. 問題提起, 理論から実機デモまで全てこなす大作で, 研究者としてワンステップ上がった実感がある. 今後もこのレベルの研究を続けていきたい. IROS-21の査読をしていたら他査読者がクソで反面教師化. 東大・塚田研との自動運転に関しての共著論文がVTC-21 Fallにサブミットされる. Fixstars Amplifyハッカソンに参戦, unlabeled-MAPFっぽい内容を出して優秀賞を貰う. 一位は取れなかったがハッカソンはやはり楽しい. 賞金で自宅の音響設備を整える. オンラインだが人生初TAをやる. OMRON SINIC X(OSX)でのインターンを始める. 個人的に一番面白そうだなと思っていた場所で研究メンバーにも恵まれる. 色んな人に「ご飯ちゃんと食べなよ」と言われる. IJCAI-21(ターゲット割当)とRA-L(逐次改善)のダブルリジェクトを同日に食らう. いいことなんかないよっ
5月
GWを使ってダメ元でACT-Xへと応募. 強引に進めたのもあり, 申請書のレベルが杜撰で反省. 結局落とされるのだが, こればかりは続けるしかない. 応募し続ける限りチャンスと学びはあるのだ. マイケル・サンデルの「実力も運のうち」が素晴らしかった. 思い上がってる全人類読んだ方がいい. OSXインターンの進捗は可もなく不可もなくといったところ. テーマ選定は当初やりたかったデータ駆動型・マルチエージェントプランニング(CTRM)に決まる. FCLやらOMPLやらpybindやらhydraやら新しいツールを大量に使い始めたので楽しかった. 環境設計にめちゃくちゃ気を遣ったが, シミュレータのプロトタイプは実質1日で組み上げる. pythonだからね, 適当に書けばいいんだよ. ランチョンセミナーではMAPFのイントロを発表. OTIMAPPのプレプリント公開. シングルカラム30ページ超え. 2ヶ月ワーカーホリックやるとこんなもんになるらしい. AFADA@ICRA-21の発表準備. いつもとタイプが違う研究なのでスライド作成に手こずる. ドライカレー生成にハマる. SIGMA fp Lというマニアックなカメラを買う. 次10年の相棒になりそう.
6月
ICRA-21参戦. AFADA発表. 朝3時に起きて聞きたいトークを聞くなど. オンラインカンファはやっぱりオンラインカンファだけど, 面白いトークが多くて楽しめた気がする. JSAI-21つまみ食い. OTIMAPPを発表して手応えはよかった. CTRMの研究では深層学習をプランニングに組込むフェーズに入る. 非自明なことが多すぎてコードどう書くんだと頭を悩ませる. 米谷さんヘルプが最強だった. まあ, 後から振返ると, 研究興味が被っていたのがあらゆる場面に恩恵をもたらしたね. 「三体」を全巻一気読み. 時代を創るSFなので全人類読んだ方がいい. 前々から考えていたMSRA Fellowshipに応募. 推薦状書いてもらったり, 書類見てもらったりと方方に頭を下げる. いつかする側になるのだろう. 二ヶ月近く人に会ってなかったが, 久しぶりに腐れ縁と箱根温泉旅. 同期たちが日本酒を部屋にぶちまける. 1kgのアイスを買っては食べ尽くし続けていた.
7月
MAPFの逐次改善がIROS-21アクセプト. RA-Lのレビューがイマイチ(質もだが)だったので, とりあえずは良かった. OTIMAPP論文を先生方の勧めもありSODA-22という理論計算機科学のトップカンファに出す. 個人的にはAAAI・IJCAIあたりに十分通る内容だと思っていたが, 色んな分野に挑戦してみるのも悪くはない. ターゲット割当の論文リバイズに取組む. アルゴリズムの時間非依存化や実機デモをやって補強する. いい論文に仕上がりそうで嬉しい. 若手海外挑戦プログラムの結果が返ってきて補欠止まり. 申請書はキッチリしていたので残念に思う. インパクトが足らなかったかな. CTRMの研究は停滞気味. アテンション機構を導入したりと, 手を動かして色々アイデアを試しているだけにフラストレーションが溜まる. が, 毎日粛々と進めるしか道はない. 自宅で日本酒会. 想像以上にダイナミックな樽の作り方を知る.
8月
自動運転の論文がVTC-21 Fallにアクセプト. めでたい. 主著ではないのは初である. AIJにターゲットを決めてPIBTのジャーナル化に取組む. OSXのお盆休みを使って実験をとにかくぶん回す. 博士課程に休みはない. MSRA Fellowshipが最終選考に生き残る. 朗報である. 準備に勤しむ. 博士課程の中間審査をこなす. 血まみれになる. CTRMの研究は相変わらず苦戦するも徐々に形ができ始める. ただ, この頃は実験結果が出ていなくて, 先行きが暗い苦しい時期でもあった. この月は人に会わなかった.
9月
MSRA Fellowshipの最終選考を終える. 手応えは微妙. 周りが業績お化けしかいない. 案の定ダメだったのだが, nomination awardをもらって何だかんだで良い経験であった. AAAI-22にターゲット割当の論文をサブミット. 十分に良い内容である. これでダメだったらランク落とす. プレプリントも公開する. 情報科学ワークショップに参加. ワクチン副作用の中, 座長をやったり発表したり. プレゼン賞をまたもらってしまった. 参加者投票で選ばれてるので光栄なんだが, 僕はいいから他の人にあげて… 懇親会でボドゲをやって久しぶりに「楽しい」という感情を取り戻す. CTRMの研究はようやく結果が出る. 業績にしないのはナンセンスというセルフプレッシャーもあり, 正直ここまで辿り着くのはかなり辛かった. 息をつく間もなく論文化の作業に取組む. コード最適化をミスってバグを踏みまくる. IROS-21参戦. 逐次改善の発表. CTRMが佳境すぎて他の研究を聞きに行く余裕がなかった. この月も人も会わなかった.
10月
CTRMをAAMAS-22にサブミット. 難産であり十分に良い内容であり, 立ち位置もたぶん良い. それと同時にOSXインターンも終了. 研究者としてワンステップ上がった実感はあるが, もっと色々できた気もする. 与えてくれた環境には満足してるが, 自分の研究能力に満足することは決してない. OTIMAPPを出したSODA-22はリジェクト. 敗因は明らかにカンファの選定ミス. 悔しい. ただレビューそのものは有益で感謝してる. 一年ぶりにスマホを導入する. 燃え尽き気味になっていたので一週間休みをとって, 屋久島にいったり, 斧投げをしたり, キーボードを新作したり, ジンジャエールを作ったり. トレッキング中に次の研究テーマをマルチロボット・モーションプランニング(MRMP)に決める.
11月
霜焼けに悩まされるシーズンが到来. MRMPはJuliaでやることに決めてベストプラクティスを試行錯誤する. 書いててホント楽しい子. 研究言語として使い勝手がよく, 今後のファーストチョイスにしたい. 地上ロボットに拘らなくてよいのでロボットアームを買う. toioを大量に動かすためにラズパイで分散システムを構築する. アルゴリズムを設計するにあたり, 白紙に向かってうんうん唸る日々. 結局大事なコンセプトは風呂場で降りてきた. PIBT論文を仕上げてAIJにサブミット. ターゲット割当を出したAAAI-22のリバッタルをする. 評価はされてるんだが, 結局リジェクト. メタレビューで言われたとおり, “general AI"のカンファの内容ではなかった. 非常に悔しい. リバイズ用にアルゴリズムをいじったりなど. CTRMを出したAAMAS-22のリバッタルをする. これは大丈夫そう. ワクチンやらの事情で止まっていた留学手続きを再開して2月に渡仏を目指す. ちょうど若手海外挑戦プログラムが繰上げ採用になったとの朗報が届く. OSXインターン記を書く. だいぶ戦略的で意図的な行為ではあった.
12月
ターゲット割当を拡充してAIプランニングに特化したICAPS-22にサブミット. 論文の完成度がめちゃくちゃ高い. OTIMAPPをIJCAI-22に出すべくリバイズ. 実験やらの見栄えをよくする. ページ制限の都合で30ページを6ページにまとめる. 辛い. CTRMがAAMAS-22にアクセプト. 通ると思っていたが一発で通った. 非常にめでたい. お世話になったOSXにちゃんと成果を残せて本当に良かった. MRMP研究を育てる. toioを自由自在に動かせるようになる. Node.jsの非同期処理周りの実装が辛い. 渡仏準備はビザの手配が進まずフラストレーション. 向こうの事務のレスが非常に遅い. ワイン会をしては潰れる. 31日はいつもどおり読書録を書いて年越し.
1月
正月は積読を減らす. 中でも「多様性の科学」は良本であった. 全人類読むべき. OTIMAPPをIJCAI-22にサブミット. 十分に良い内容である. リュックを新調する. 課金してしまった. 長野温泉旅行. いい宿に泊まり食事も堪能. 軽井沢ブルワリーのオートメーション具合は推せる. D先生からそろそろレビュー論文書いたらと言われ考え始める. 長期戦になりそう. OSXにアルバイトとして復帰してAAMAS-22のカメラレディなどの手配. ブログ書いたりサイト作ったりとやることが多い. MRMPの研究は強力な結果が出始める. 狙い通りなり. IROS-22にターゲットを定めて完成を急ぐ. ターゲット割当を出したICAPS-22のリバッタル. Strong Accept/Accept/Acceptだったので安心した. 渡仏準備はビザ手配に必要な受入承諾書がようやく手に入る. 2月中はスケジュールが厳しいので時期を調整する. 誕生日は26にもなって何も成し遂げてないじゃないかって考え始めてしまって, ボロボロ泣いてしまった.
総括?
とまあ, 生々しいエッセイである. 博士課程を振返って綺麗で精緻な文章を書く人は多いけど, でも, そんな綺麗なところじゃないだろ? もちろん研究には楽しいシーンが多い. でも, もっとこう, 苦しくて辛くて, でも辞められなくて, といった執念じみた一面が進行形ではある. そういう感情を風化させたくはない. 美化はしないよ, 紛れもなく苦しい一年だった.